コラム

【腕時計はいらない?】若者に高級腕時計は必要か 腕時計が不要な時代の今、存在意義を考える

昨今スマートウォッチが現れ、ファッションに敏感な人にもあまり相手にされなくなった腕時計。
高級なものと言わずとも、腕に何も付けていない若者が目立ち、かといって腕時計を付けているからという特別感もなく、肩身が狭いのがこの現代の腕時計の状況である。

令和という時代になった今、ではなぜ高級腕時計というものが今も存在し、一定の市場と地位を占めているのか、そして若者にとっての存在意義を一度考えてみようと思う。

この記事では「腕時計」と「スマートウォッチ」は別物とし、あくまで時計単体としての機能をもった腕時計のことをこの記事で書きたい。

「若者」という書き方をしているが僕自身まだ20代であり、若者の一員としての目線でこの記事を書いてあるということを注記しておく。
また僕はアパレルやジュエリー関係の人間ではないし、そういった仕事に携わったことはない。

僕は25歳のころ、フリーランスとして独立する際に50万円の高級腕時計を購入した。
昔から高級腕時計に憧れがあったわけではなく、親がそういう時計をつけていたということもない。腕時計は単なるファッションアイテムと思っていた人間である。
もちろんそれを自慢しようなんてことではなく、客観的に若者にとっての高級時計というものを考えたい。

「50万円程度では高級と言えない」という方はこの記事を閉じてもらって構わない。
一般の若者にとっては十分高級であるし、そもそも「何万円からが高級腕時計だ」という議論をしたいわけではないので。

時間はスマホで確認できる

今何時?と聞かれると、ほとんどの若者はスマホで確認する。

ガラケー時代やスマホが普及し始めたすぐくらいの頃は「腕時計ではなくスマホ・携帯で時間を確認するのはダサい」的な風潮も多少あったが、もはやその風潮すらない。

高かろうが安かろうがかつてほとんどの人が腕時計を付けていたが、令和になった現代では付けていない人がかなり目立つようになった。

「ミニマリスト」「ノームコア」という「持たない」「主張しない」シンプルなファッションの流行や時代の推移もあり、車・家・腕時計という「贅沢品」は若者と距離ができるようになった。
ファッションに興味がなく、無駄なところにお金を掛けたくないという外見にこだわりがない人でさえも、この風潮のおかげで「持たない」ことに大義名分が与えられ、腕時計を始め様々な装飾品が排除されていった。「単に邪魔」という人も多いだろう。

さらに、ITに敏感な若者はApple Watchをはじめとするスマートウォッチを採用し始め、広く普及している。もともとITに強い成功者は高級な腕時計を付けているイメージだったが、それがスマートウォッチと立場が入れ替わることになった。
僕が大学生のころのIT意識の高いきれい目ファッションが好きな同級生はイッセイミヤケやスウォッチなどのシンプルな腕時計を付けていることが多かったが、いまではそのような趣向の人たちもスマートウォッチに移行している

単に「時間を確認する」為だけの機能しか持たない腕時計はそうやって若者の腕から姿を消していった。

ファッションアイテムとしての腕時計は高級志向である必要が無い

G-SHOCKやチープカシオ等、ローファイなファッションアイテムとしての腕時計の市場は存在する。
それは例えばセットアップにニューバランスのスニーカーを採用するような、どちらかというといわゆる「ハズし」としての意義が強い。

G-SHOCKはその頑丈さから、仕事中にスマホを触れないハードな現場で働いている人のギアになったりもする。
その延長で普段からもG-SHOCKを付けている友人がいるが、それはG-SHOCKの頑丈さという「機能性」も含めて採用されているといえる。

デザイン性・ファッション性としての腕時計の採用はもちろんまだ見られる。
これは純粋にファッションアクセサリーとして腕時計を付けており、セレクトショップで売られているセイコーやハミルトンといった落ち着いたデザインのものや、ヴィヴィアンウエストウッドのような個性的な腕時計がよく使われている。
しかしそれらは10万円を超えることはほとんどない。この場合腕時計はファッションアクセサリーとしての範疇を超えず、単なるアクセサリーに何十万といった資金を投資できる若者は稀なのである。

ハズし」「機能性」「ファッション性
若者が腕時計をつける理由であるこれらの要素を高級腕時計は持ち合わせていない
高級時計はハズしとしては使えずに逆にキメた、ラグジュアリーなアイテムになる。
頑丈さで言うと、もちろん頑丈な高級時計は多数あるが、傷をつけるのが怖くてそもそも「頑丈さが必要になるような扱いは怖くてできない」のである。

ファッション性はというと、たしかに高級感はあるが若者から見て時計の目利きはできないため、ぱっと見てそれが10万なのか100万なのかという目利きはできない。
10万以下の腕時計でも十分に高級でおしゃれに見え、それ以上の資金を投資するのはブランド志向・高級志向である他にないのである。

高級時計が示す「地位」「成功」という見栄を若者は求めていない

高級時計が示す大きな指標として、「地位」と「成功」がある。
あまりに高額な上に時計としての機能しかないため、家や車よりも必要不可欠とはならない「時間を確認するだけのためのもの」にお金を掛けられるという「余裕」を見せつけられるアイテムである。

成功者の嗜みであり、証であったその高級時計は、現代の若者から言わせれば「見栄」でしかないのである。「この時計は数千万する」と若者に自慢したところで、「すごい」とは言っても「僕も欲しい」となる若者は少なくなっている。
そもそも時計なんてなくても成功者のオーラというものは隠せないし、その人が凄いということは腕時計を見る前からなんとなくわかっていることが多い。だから成功している「証明」にはなるかもしれないが「付加価値」にはなりにくいのが腕時計である。成功者であり憧れられる物といえば高級車の方がまだ若者にはウケがいい。

しかもホリエモンやメンタリストDaiGo、前田裕二という今時の「若者のカリスマ」がこぞってApple Watchを付けていることもあり、「成功者であれど高級時計なんて必要ない」というムードさえあるのである。

若者が高級腕時計を付ける意義は、「大人と対等の立場に立てる」こと

ここまで高級時計が若者にとって興味もなく不要であることを述べてきたが、それでは若者が高級時計をつける意義を考えようと思う。

僕は25歳の時にフリーランスとして独立する際にラルフローレンの50万円の高級腕時計を購入した。
それまではずっと、7万円ほどで購入したヴィヴィアンウエストウッドの腕時計を付けていた。あまりよろしくない話だが、会社員時代にはスーツでもこのヴィヴィアンの腕時計を付けて出勤したりもしていた。

どちらかというとこのラルフローレンの腕時計もファッション寄りだが、実物を見ると漂う高級感はファッション腕時計と比べると別格である。
ここで述べたいのはそういうことではなく、その「50万円」を身につけることが、僕にとっては「背伸び」であり、「身を引き締めるアイテム」になっている。
この経験は、「高級腕時計しか認められないのであれば腕時計をつけなくていい」「スマートウォッチで十分」と考えている人には味わえない感覚である。そもそも「高級時計なんて不要」といっている若者は高級時計を付けたこともない場合の方が多い

若者目線で高級時計がいらないどうこう言っていても、ビジネスとして関わる年上の大人だったり格式高いところに行くと地位のある大人はある程度の腕時計を付けていることが多い。時計が趣味の大人たちは現代でもたくさんいるのだ。
たとえばそういう人たちと関わる時に、いい腕時計を付けているかそうじゃないかでただの若者として扱われてしまうかそうではないかの判断材料にもなる。

時計好きな大人から見れば、スマートウォッチだったり何も付けていない人を見ると「ああ最近の若者だなあ」で終わりである。
多少なりともいい腕時計を付けているともちろん時計好きな人との話題にもなるし、安い腕時計を付けているときよりも変に恐縮せず話ができたりする。上に立つ必要はなくともその話題の土俵に上がれると言うことだ。

スーツで男がつけていいアクセサリは結婚指輪と腕時計だけ」という言葉を聞いたことがある。
若者に言わせれば古い価値観といわれてしまうかもしれないが、僕は素敵で格好いい言葉だと思う。

装飾品は女性が付けるものであって男がじゃらじゃらつけるものではないという価値観は大昔からあったものだ。
例えば公の場では女性は帽子も装飾品として認められるが、男性は認められない。だから女性は食事中も帽子をかぶったままでよく、男性は脱ぎべきというマナーも存在する。

スーツであればそういったドレスコードやマナーがわかりやすく、例えば冠婚葬祭時にスーツにウォレットチェーンなんて付けているともう最悪だろう。
スーツで出勤したり結婚式に臨む際、普段ファッションでつけている指輪やネックレスはつけていかないはずだ。
それが腕時計だとどうだろう?普段使っているものがいいものだったらそのままつけていける。

スーツの生地の良し悪しなんて一目見てわかる人は大人でも少ない。靴も高級といっても時計ほどの値段にはならないし、靴を見て値段を当てられる大人もわずかだろう。
だからこそ、スーツを着るときに最も力を入れていい場所は腕時計なのである。高級スーツでなくても高級腕時計があればそれだけでぐっと引き締まるし、逆に高級スーツでも安物腕時計を付けていると全く締まらない

ユニクロでパーティ会場に行くか、高級スーツで安居酒屋に行くか、みたいな話にはなるのだが、「良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる」なんて言われるように腕時計も「いい腕時計はいい大人に会わせてくれる」こともあると思う。

背伸びで上等。若者が高級腕時計を買うことに意義はある。

「悟り世代」とも言われるように高級品に対して無欲で、機能と効率、流行ばかり求める若者には高級腕時計は過去の産物と言われてしまうかもしれない。
しかし、高級腕時計はあえてそれを身につけることで自分を一つ上のステージに持っていってくれるアイテムでもあると思う。

さらにいうと、そういった高級腕時計が不要というブームの現代であえて高級出時計を手にする若者は少数派だ。それだけで同世代の人たちと差別化を図れる。
もし売るとなったときにも大きく値段が下がらない、むしろ上がるものもあったりするので時計によっては投資にもなる。

これ見よがしに自慢したり、高級時計をしているからと言って生意気にさえしなければ、きっと大人にも興味を持たれ可愛がってもらえる。
大人に媚びているような書き方だがそうではなく、大人にも立ち向かうための「武器」として若者が高級腕時計を付けるのはアリなんじゃないかなと僕は思う。

要するに、もし「高級腕時計いいなって思うけど、最近要らないっていうムードだしどうしよう…」って悩んでいるのであれば「欲しけりゃ買ったらいいじゃん、いいこともあるよ」というお話しでした。

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